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あごにヒゲを生やしているが、瞳は意外にあどけなく、まだ若そうだ。
深緑のジャンパーに、オレンジのナップザック、頭にはバンダナといういでたちで、
手にはなんと銃が握られていた。
本物だろうか。
まさに戦争ごっこという、その男の格好を、思わずまじまじと見つめてしまう。
男はかがみこんで、俺と遍に視線を合わせ、
「びっくりした、何してんだよ、こんなとこで。道に迷ったの?」
と、うすく笑みを浮かべた。
俺は黙って首を振る。遍は、
「それ、拳銃だよね? 撃つのか?」
と目を輝かせた。
「ああ、これは猟銃。エースハンターっつうんだよ」
「リョウジュウ?」
「うん、猟をするための銃」
「見せて」
「ダメダメ」
男は、背中に銃をまわして隠した。
「なんで見せてくれないのお。ケチ」
遍が口をとがらせる。
「ケチって……危ないからさ。それより、なんで二人してこんな山の中にいんだよ。
道に迷ったの?」
さっきと同じ質問だ。
俺は少し迷ってから答えた。
「道には迷ってない。俺たちは家出してきたんだ」
「へえー。やるじゃん」
ピュウっと口笛を吹いて、たばこに火をつけた。
諭されたり笑われたりするだろうと思っていたので、拍子抜けした。
「なんで家出したわけ? 親とケンカ?」
「猫を……」
「猫?」
「拾ったんだけど、飼っちゃダメって言われて」
「なるほどねえ」
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