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男は瀬木と名乗った。俺は、瀬木に仔猫を見せた。
「可愛いというかなんというか」
瀬木は、仔猫の背中を撫でて、
「瀕死だな」
とつぶやいた。
「やっぱり、もうダメかな」
「……俺が飼ってやってもいいよ」
「エッ、本当?」
「名前とか決まってんの?」
「いや……」
「ミヤオ」
遍が口を挟んだ。
勝手にミヤオとつけていたらしい。メスのような気もするのだが。
「そうか、ミヤオかあ、お前」
瀬木が目を細めて、仔猫の首のあたりをなでると、「ミヤ―」とかすれた声で鳴いた。
本当は自分が飼いたかったが、瀬木が面倒みてくれるというのなら、
ミヤオは大丈夫だろう。
気持ちに余裕が出ると、銃のことが気になりだした。
「あのさあ、さっきのエースハンターってやつ、見せてくれない?
俺も銃持ってみたいんだけど」
瀬木は、木の切り株に座って、二本目のたばこをくゆらせた。
「あのなあ、法律で厳しく決まってんだよ。
免許持ってない人は、銃は触っちゃいけないの。触った場合、俺がつかまっちまうんだよ」
「もう遍が触ってるけど」
「ぎゃあー!」
瀬木は叫んで、銃を頭上にかかげた。
「あ、危ないから……マジで……。他の人には黙っててよ」
「じゃあさあ、銃撃ってるとこ、見せてくんない? それならいい?」
「ああ……」
提案すると瀬木は、仕方ないな、というふうに肩をすくめ、ニヤリと笑った。
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