スライムと人魚の場合。

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海。 それは母なる海。 生きとし生けるものの起源。 だがそこはスライムにとって、強酸性の沼のようなもの。 浸透圧の関係上、スライムの主成分たる水分は海へと移っていき、縮んでいく体。 体が縮んでいく地獄の苦しみの中でスライムは叫ぶ。叫ぶたびに消化器系に海水が流れ込み、内から外から縮んでいく体。そして消えていく命。 人魚は岩漿の上からその光景を眺めることしかできなかった。助けに飛び込む間もなく溶けるように縮んでいってしまったのだ。 ラァァァァァァ!! 次にあげた歌声は鎮魂の歌。 愛するものを死に誘ってしまった己の呪われた宿命を嘆き、人魚は泣き続けた。 そして涙が涸れたころ、彼女は思っていた。 てへぺろ。 こんなことなら人間になってみよっかなー。 そして人魚は人間になった。 スイーツ。
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