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沈みゆく夕日が川面に投げかけた光は煌めいて、まるで宝石のようだった。それでもどこか虚しく見えるのは、それを自分の物にはできないと俺たちが諦めてしまっているからかもしれない。
「決心、ついたか。」
俺がそう呼びかけると、体育座りでうつむいていたカオリは頭を上げた。
「……うん。……いつまでもうじうじしてちゃ、だらしないよね。」
そう言って、カオリは腰を上げた。
「ゴメンね、私が自分で何とかしなきゃいけないことなのに、付き合わせちゃって。」
とっさに俺は首を振った。
「カズヤをカオリに紹介したのは俺だ。二人の別れを、俺は見届ける責任がある。」
俺が胸を叩いてみせると、カオリは力無く微笑んだ。その右手にはスマートフォン、左手にはカズヤから贈られた指環を強く握りしめている。
「じゃあ、始めるね。」
そう言うと、カオリは大きく深呼吸をした。
そしてまずLINEを開いて、震える指で、カズヤとのトーク履歴を削除した。
陶器のような白い肌に、一筋の涙が伝う。
「……よし、次は指環……ね。」
スマートフォンを握る右手が、小刻みに震えている。力を入れないと、もう立っていられないのだろう。
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