夕暮れの宝石

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カオリは、決心したように目を見開いた。 「どーするもこーするも、ないよ。」 「おい、ちょっと待て、お前、まさか、」 カオリはスカートの裾をつまみ、川へと足を踏み出した。 「待て待て待て!ちょっと待て!この川、深いところで水深5mはあるぞ!そのまま入水自殺する気か!」 「あ!!!」 「急にデカイ声出すな!」 「私、カナヅチだったわ。」 「なら何故行こうと思った!」 カオリは、砂利の上でへたり込んだ。 「うわぁ……どうしよ……」 「……まぁもうやっちまったことだし……しょうがないよ。」 「他人事じゃんか!アンタが取ってきてよ!」 さっきまであんなに申し訳なさそうだったカオリは、もういない。 「実は俺も、カナヅチなんだよね……」 「嘘つけ!取りに行きたくないからって!」 「マジだって!」 カナヅチなのは事実だ。けどもし俺が水泳選手並みに泳ぎが達者だったとしても、この微妙に濁った川を潜水するのはまっぴらゴメンだ。 「はぁ……どうしよう……」
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