トップアイドルの素顔

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誰からも注目されて、虚飾の世界を現実にするのが、僕達アイドルや俳優、芸能人の仕事だと思う。 日常的に有り得ない世界だと分かっていても、たくさんの人が引き込まれる。 だから僕は限られた時間だとしても、楽しいとか凄いと思ってもらえるように努力してきたつもりだけど、まだ足りない。 もっと高いクオリティーが出せるはずなんだ! 「コウヤ、表情硬いってか怖い」 「え?」 「何かファンに恨みでもあるのかってくらい、前を睨み付けてたよな」 「二人から見て、そう見えるんだね…ごめん、気を付けるよ。もう一回最初から!」 二人が苦笑しながら、もう一度最初からダンスをやり直す。 今度は三人で、それぞれのポジションと振りの大きさ、楽しそうな表情…全てを出し切る気持ちで、目の前の鏡に映る自分に負けたくないと思いながら、三人で呼吸を合わせていく。 僕達『ROSES(ローゼス)』が、トップで居続けるには泣き言を言う暇も自分を甘やかす時間なんて無駄だ。 僕は甘さも優しさも捨てた…捨てないと自分が窒息して壊れそうな気がしたから。 自由な選択なんてさせてもらえないけど、僕にはプレッシャーは感じない。
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