02*神代へようこそ

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 東京(の隣の埼玉)のひとり暮らしに、祖父も、親戚のみんなも大声で反対と言った。大阪の夜の街で遊ぶだけでうるさかったのでわかってたけど。危ない危ないの輪唱。『街灯もない畦道を自転車で走り、田んぼに落ち、カカシにぶつかってケガ。みんながパニクった和歌山の超ド田舎は危なくないのか?』と大声で言い負かし、毎日20時の帰宅、21時の連絡、20歳の盆前に帰省という約束で、東京(の隣の埼玉)の大学に進学。ただいま、ひとり暮らしを満喫中。  ……と言えないか。テーブルにつっぷす。私の性格は、祖父や、親戚のみんなに作られたと思う。約束を破れない。いまなお、20時30分の壁は高く、厚く、今日もバイトを終え、ダッシュ。20時27分の帰宅にドキドキ。だれかに見られてるんじゃないかと思ってしまう。小心者の私は毎日が疲れる。 「まずは20時30分の壁にアタックだ」  テーブルに置かれた激励用鏡に映る私を励ます。それより、スーツルックの卒業かな。店長に、ラフな服でOKといわれても……。 「……あれ?」  鏡に映った私の後で、なにか動いた。気のせいかな。 「ひとり暮らしだし」  聞こえるように言いながら、フェイント。  振り返ると、チェスト、上に化粧箱、ノートPC、本、フォトスタンド、キューピーちゃん。いつもどおり。変化はない。泥棒の隠れてる気配も、1Kのアパートに隠れる場所もない。 「あれ?」  ゆっくりと立ち上がり、キューピーちゃんと目を合わせながら、近づく。 「キューピーちゃんの手が下がってる」  バンザイさせてたはずなのに。今朝、下がってたっけ。いやいや。さっき上がってたよね。じっと見る。なんでだろう、なんでだろう。
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