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やんごとなき事情
「よし!やっと見つけた!」
洞窟の奥深くの小部屋に置かれていた宝箱。重戦士のデビッドはそこから鍵を取り出した。
「やっと見つけたね。この奇跡の鍵」
魔法使いのジョンはそう言って微笑む。それもそうだ。奇跡の鍵があれば世界中にある扉のうち9割以上は開けることができる。
「で、これは誰が持つの?」
僧侶のアンナはそう皆に尋ねると、
「そりゃ勿論、リーダーの役目だろう?」
全身に甲冑を身にまとったデビッドはそう言ってエドの右肩をこぶしでツンツンと突く。
「うん。分かった」
エドはそう言って、奇跡の鍵を腰に身につけているカバンにしまい込んだ。
「大変だったけど、私達頑張ったわよね?ほら、レッドドラゴンの炎にも耐えながら」
満足感たっぷりの表情でアンナは言う。
「ええ。頑張りましたとも」
ジョンも爽やかな顔でそうつぶやいた。このダンジョンの魔物はレッドドラゴンだけではなくガーゴイル、ダークウォーロックなど猛者揃い。しかも毒ガスの噴射口やら落石スイッチやらトラップも数多く仕掛けられていたため4人はかなりの苦戦を強いられていた。喜びもひとしおである。
「よし、じゃあ帰ろうか!」
デビッドがそう力強く言うと、ジョンは無言で頷き、テレポートの魔法を唱える。4人は聖なる光に包まれ洞窟の奥深くから脱出した。
この時まだエドは気づいていなかったのだ。
レッドドラゴンが吐いた炎によってカバンの一部が焼かれ、穴があいていたことに。
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