時機

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時機

 エドの転職から2週間後、夕日が沈みかけた頃にマーダの神殿を1人の青年が訪ねてきた。三角の帽子をかぶった青年の顔を見たセーファスの表情が一気に変わる。 「ジョンさん、お久しぶりです!」  セーファスはそう挨拶すると、足早にホイットニーを呼びに行った。 「おお!お主は!」  玄関にやってきたホイットニーはそう言うと柔和な笑顔になり、ジョンのもとへと近寄る。 「お久しぶりです。大長老」  ジョンは帽子を取って深々と頭を下げた。ジョンはもともと貧乏な木こりだったのだが、ホイットニーの慧眼によって魔法使いに転職、今は勇者一行に連れられて獅子奮迅の活躍をしている。 「あれから、順調かの?」  ホイットニーが尋ねると、 「はい。お陰様で順調です。この間鍵開けの魔法を覚えたんですよ!一部の特殊な扉以外はこの魔法でほとんど開けられます」  嬉々とした表情でジョンが答える。 「そんな高度な魔法を……やはり大長老の見立ては確かでしたね」  そう言うセーファスは誇らしげな表情だ。 「ところで、今日ここに来たのは、何かあったのかな?」  ホイットニーが尋ねると、ジョンは重い口を開いた。 「実は……ひとつ相談がありまして。私がいるパーティにエドという勇者がいるんですが……」  エド、という言葉を聞いてホイットニーの眉間に少しだけしわが寄った。 「エドは最近様子がおかしいんです。何か私たちに隠しごとをしてるみたいで。頭につけている勇者の印もどうもニセモノに変わったみたいですし。私のパーティには他に2人仲間がいて、彼らは気づいてないみたいなんですが……彼、何を抱え込んでるのか分からなくて、心配で……彼は勇者でありリーダーであり、そして……友達ですから」  友達ですから、と言った瞬間、ジョンはうつむいた。
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