時機

2/2
前へ
/15ページ
次へ
「どうしようと言われても、こればかりはどうにもできぬのう……」  ホイットニーは苦渋の表情を浮かべてそう言う。エドはいくらジョンのパーティメンバーだとはいえ彼らに内緒でやって来た者だ。そう簡単に第三者のホイットニーが秘密を漏らすわけにはいかない。 「でも何とかしてやりたいんです。隠し事をして苦しんでいるエドの姿は見たくないんです」 「人のできることには限界があっての、どうにもできないこともあるのじゃ。お主の気持ちは分かるがの」 「じゃあ私はどうすれば……」 「時機は、必ず来る。待つのじゃ。そしてその時機が来るまで、エドに心を開き続けておくことじゃ。辛いことかも知れぬがの」  ホイットニーは哀しそうな面持ちでそう伝えた。  ジョンが神殿を去るのを見送った頃、夕日は完全に地平線へと沈んでいた。セーファスはホイットニーに問いかける。 「よかったんですか?ジョンをあのまま帰してしまって」  セーファスの問いに対してホイットニーは首を縦に振る。 「いや、こうするのが一番なのじゃ。大丈夫。なるようになるわい」  ホイットニーはそう自信を持って言い切った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加