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左門は目を光らせて三太を睨みつけた。 「へえ、そいつがですな…」 「何だ?どうしたい?」 左門はさらに三太に睨みを利かせた。 「へえ、あの斬首刑があった現場を、見ちゃあいないんですがね、ただあの時、あの場にたまたま居合わせて、物陰に隠れて震えながらその時のやり取りを聞いてやがった野郎がいましてね」 「なんだと!誰でぇ、そいつは?」 「観音さまの近辺をうろついてやがる無宿者でさあ。そいつに話を聞いたんですがね、その話からすると、やはり辻斬りだったようで」 「何?しかし、仏の懐から紙入れは取られちゃいなかったぜ」 「はあ、ただその時、おかしなやり取りがあったようで」 「何でえ、そいつは?」 「仏は仇討ちだと思ったらしく、相手の姓名を尋ねたそうなんですがね」 「おお、それで?」 「そしたら相手は、”一介の傘張り浪人よ”と名乗ったそうで」 「傘張り浪人?じゃあ科人は士分じゃねえんだな?」 「そのようで。おまけに、その後、仏は”仇討ちか?何の怨みでこのような狼藉を?貴様、我を旗本の子息と知っての狼藉か?”と尋ねたようですが」 「おお、それで?」     
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