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「ちょいと聞いたかい、あの旗本のごくつぶしが斬首刑だとよ!」 三尺路地を抜けたところにある井戸端で、どうにも興奮が収まらぬお福は、長屋の隣に住むおみつに口角泡飛ばして叫んでいた。 「さっき読売が大騒ぎしてたよ。お前さんも読売みてえじゃないか、声が大きいよ」 「声が大きいのは生まれつきよ。これが大声上げずにいられますかってのよ」 そう言いながらもお福は、周りを見回しながら、声を潜めて、おみつを井戸端の隅に誘った。 「まあそりゃそうだけどね」 「あの旗本の三男坊の放蕩者に、長屋の女子供がどれだけ泣かされてきたか。それを思えば、あたしゃ、一杯やりたい気分よ」 「なんでも大川の向こうの観音さまの前で、斬り殺されただけでなく、斬首された挙句、腕も切り取られ、試し斬りにされて臓物まで撒き散らしてたそうじゃないか」 「だから斬首刑になったと言ってんだよ」 「辻斬りの仕業かね?」 「自身番の町役人の旦那方はそう見ていなさるようだよ。だけどあんな外道を斬首刑にしてくれるなら、辻斬りだろうと何だろうと辻斬り様々、仏様みてえなもんじゃないか」 「旗本の三男坊相手じゃ、どれだけ悪さをしても町役人や同心の旦那方も手出し出来なかったからね」     
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