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「俺、もともと女の子となんて話したことなくて、
休日に、女子とどこか行くなんて初めてだったんです。
だから、事前にガイドブックで調べて
女子に人気のスポット押さえて回ったつもりだったんですけど……」
蒼井くんは俯き、顔を真っ赤にしながら、
それでも話を続けた。
「初デート、失敗しないようにと思って、
実は昨日、下見に出かけたんです。
店の場所もちゃんとチェックして。
でも俺、外観だけ見て満足しちゃって、中までは入らなくて。
だから今日、入ってびっくりしました。
想像以上に値段が高かったり
雰囲気が、思ってたのと違ったり」
相当緊張しているのか、
蒼井くんの話は、しどろもどろだった。
でも、彼なりに、
必死に言葉を尽くそうとしてくれているのがわかった。
と、次の瞬間、蒼井くんは急に顔を上げた。
ばっちり、目が合う。
彼の瞳は少しうるんでいて、
唇も少し、噛んでいた。
「すいません。こんなにかっこ悪い彼氏で。
デート、台無しにしちゃって」
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