全てを捨てた幸せ

1/1
前へ
/4ページ
次へ

全てを捨てた幸せ

 急いで二階のアパートへ続く玄関をカンカンカンと走って登った。  玄関の鍵が空いていた。思い切りドアを開けると、そこに真司の靴が置いてあった。 「真司!?」 「優子、おかえりー」 「どうしてこんなところにいるの!?今日は結婚式でしょ?」  早く真司を正してあげなければ……と、優子は必死に詰め寄ったが、心の底からジワジワと温もりが湧いてくる。 「全部捨ててきた」 「え?」 「真希さんも、社長も、結婚式も」 「なんでそんな……」  真司が優子を抱きしめた。 「俺はやっぱり優子と居たい。優子といるのが幸せなんだ」 「真司……」  優子は流れてくる涙を抑える事が出来なかった。 「優子」 「うん?」 「これ、もう一度受け取ってくれないか?」  真司が差し出してきたのは昨日返したペアリングだった。  優子は震える左手を前にだす。真司がそっと指輪を薬指にはめてくれる。 「優子、愛してる」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加