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全てを捨てた幸せ
急いで二階のアパートへ続く玄関をカンカンカンと走って登った。
玄関の鍵が空いていた。思い切りドアを開けると、そこに真司の靴が置いてあった。
「真司!?」
「優子、おかえりー」
「どうしてこんなところにいるの!?今日は結婚式でしょ?」
早く真司を正してあげなければ……と、優子は必死に詰め寄ったが、心の底からジワジワと温もりが湧いてくる。
「全部捨ててきた」
「え?」
「真希さんも、社長も、結婚式も」
「なんでそんな……」
真司が優子を抱きしめた。
「俺はやっぱり優子と居たい。優子といるのが幸せなんだ」
「真司……」
優子は流れてくる涙を抑える事が出来なかった。
「優子」
「うん?」
「これ、もう一度受け取ってくれないか?」
真司が差し出してきたのは昨日返したペアリングだった。
優子は震える左手を前にだす。真司がそっと指輪を薬指にはめてくれる。
「優子、愛してる」
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