第1章 第1相談者

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「はーい」バイトの早乙女菜月は腹筋ワンダーコアをやめて、クローゼットから青いオーバーオールの作業着をとりだした。菜月は忍術修業を会得して新宿に流れ着いて5年。今年で25歳になる。その鍛え抜かれたスタイルと美貌はまさに峰不二子のようであった。     * 「そうは言われましても、私が長男でして母も他界していましたので喪主にならざるを得なかったわけでして」 松崎和也(かずや)は精いっぱい謝罪を込めて言葉を振り絞った。 「ですけどね、時期が時期でしょ、先生。11月27日から5日間休職された神経が私にはわかりかねますの。公務員の考え方っていうのですかね、子供たちの進路が決まるこの大事な1週間にプライベートを優先してお休みなさる?民間の会社ならクビじゃないかしら。」竹川雄吾の母親は皮肉いっぱいに聞いた事のあるような公務員バッシングをここぞとばかりにまくしたてる。 「ですから、雄吾君の進路につきましては、学年進路指導の佐藤先生に全面的に引き継いでいただきましたので・・・」和也は少しでも怒りを静めるのに防戦一方であった。 「あのねえ、ウチの子の性格や内申も担任のあなたが責任もって進路指導をするのが当たり前でしょ、佐藤先生はウチの子が漢検2級を持っているのを忘れて、併願の大山学園特進の内定が取れなかったんですよ、内申1つの差で。」雄吾の母が直球を投げてくる。     
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