第3章 第3相談者

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 1年は続いただろうか、よし江のパチンコに異変が起きる。どんどん金が吸いこまれていくのだ。やってもやっても減っていく。年金はあっという間に消えていた。何とかして戻したい。よし江が次に選んだ手段は、広島の財産だった。土地と夫の保険合わせて 1000万。この額ぐらいあるなら年金の10万やそこら、埋め合わせるのは簡単だ、そう思った。1万儲かれば、2万をぶっこむ。そして2万は消え、また2万をつぎ込む。こうした日が何カ月続いたか、残金は100万程度になっていた。  そんなある日、広島の弟が心筋梗塞で死んだ。生涯独身で身寄りもなく親類はよし江だけになっていた。葬式や埋葬はよし江がするしかない。息子の博志は財産は1000万あると思っている。よし江はなけなしの残金と携帯電話で見つけた金融会社から50万を借りた。  案の定、年金生活は破たんした。金融会社の借金は120万に膨れ上がっていた。仕方なくよし江は博志に自白した。こっぴどく怒られた。博志は貯蓄を崩し、120万を返した。今後、年金は博志の管理下に置かれることになった。よし江は週1万のこずかい制になったのだ。もちろん、今後一切パチンコ店には出入り禁止とされた。  それでもよし江は、パチンコがやめられなかった。朝食が終わると頭がそわそわして落ち着かない。ホールの音、煙草の香り、ジャラジャラの震動。気がつくと店の方へ足が向かってしまうのだった。     *     
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