第3章 第3相談者

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こうして毎日山のような原稿が届く。その多くは定年を迎えた有閑な人たちからの原稿だった。内容は大半が自分のライフストーリーを描いたものか、マニアックな歴史ものである。戦争体験記も多かった。 真実は小説より奇なり、とはよく言うが、それなりに波乱万丈なものもあり良くできたものもあった。ここからが営業の腕の見せ所である。博志は作者に電話をする。 「いやーなかなかよく出来ていますよ、主人公の描写がうまいですね、もう少し最期にオチのつけどころがあるともっとよくなるんだけどなあ」博志は言う。 「いま、企画には上げていますが、残念ながら特賞にはなりません。でも、惜しいんですよね、あと少し手直しをすれば・・・」博志は続ける。 「では書きなおします」と大半の人は答える。 「いや、どうでしょう、私たちにお任せいただけませんか?プロが徹底的に文章を構成しなおします。○○様にはアイデアをいただいた形として編集料だけで出版させていただきます。」これが、博志の決め台詞だ。 「い、い、いくらかかるのでしょうか」 「150万で立派な装丁、イラストまでお付けします」     
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