70人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「はい、皆様のイライラ解決!発散堂でございます! ハッサン24、24時間受付中です!」御手洗の声はルパン三世のように軽妙だが今日は掠れ気味だ。
「あのう・・・怒りがいっぱいで・・・その・・・どうしたらいいか・・・」
よくある電話だ。とくに女子の場合に多い。半分訝しいと思って電話してくる。
「はい、お電話ありがとうございます、初めてですね、ではお名前からどうぞ、仮名でもかまいませんよ」
*
「まわりがさ、やっぱりうらやましいんだよ」川端(かわばた)翔(しょう)は意を決したように酔いの力を借りて言ってしまった。
「なにも産まないって言ってるわけじゃないでしょ、あたしは37歳までは待って、とお願いしたはずよ。あなたもそのとき賛成してくれたじゃない、私はそれまで仕事を優先するって」妻の亜季(あき)は感情的になるのを抑えて言った。
「した、した、それは認める。でも親父が癌になったり、母ちゃんがまた働きだしたから、せめて孫は早く見せてあげたいなって。この前も母ちゃんに『あたしの生きがいってなんだろうね』って言われたしさ。」翔は言った。
「あたしが今、オリンピック特需で、一番大事な時だってわかってるでしょ。自分の力を発揮できる最大のチャンスなの。親を理由に子供を作ろうなんて、神様の罰が当たるわ」
亜季はうんざりした声で答えた。
最初のコメントを投稿しよう!