第4章 第4相談者

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「はい、皆様のイライラ解決!発散堂でございます! ハッサン24、24時間受付中です!」御手洗の声はルパン三世のように軽妙だが今日は掠れ気味だ。 「あのう・・・怒りがいっぱいで・・・その・・・どうしたらいいか・・・」 よくある電話だ。とくに女子の場合に多い。半分訝しいと思って電話してくる。 「はい、お電話ありがとうございます、初めてですね、ではお名前からどうぞ、仮名でもかまいませんよ」     * 「まわりがさ、やっぱりうらやましいんだよ」川端(かわばた)翔(しょう)は意を決したように酔いの力を借りて言ってしまった。 「なにも産まないって言ってるわけじゃないでしょ、あたしは37歳までは待って、とお願いしたはずよ。あなたもそのとき賛成してくれたじゃない、私はそれまで仕事を優先するって」妻の亜季(あき)は感情的になるのを抑えて言った。 「した、した、それは認める。でも親父が癌になったり、母ちゃんがまた働きだしたから、せめて孫は早く見せてあげたいなって。この前も母ちゃんに『あたしの生きがいってなんだろうね』って言われたしさ。」翔は言った。 「あたしが今、オリンピック特需で、一番大事な時だってわかってるでしょ。自分の力を発揮できる最大のチャンスなの。親を理由に子供を作ろうなんて、神様の罰が当たるわ」 亜季はうんざりした声で答えた。     
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