第4章 第4相談者

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「あと5年待ちか、俺耐えられないよ」翔はぼそっと口にした。  亜季は工業デザインを学び、大学を出たあとは外観建築(遊具、ベンチ、照明、門扉そしてトータルな企業の外観設備の設計)の会社に就職した。入社して8年目になり主に企画からデザインまでを担当するようになっていた。折しも大阪万博が迫っていてあって亜季の会社は俄然、業界からの注目を浴びるようになった。亜季が30歳のときである。翔と結婚して2年。2人はマイホームを建てることを目標に頑張っていた。     * 消防士が決め手だった。川端翔という男の子だ。片瀬(かたせ)亜季(あき)はその筋骨隆々、それでいてチャラくさくない服装、第一印象からいいなあと思った。地方公務員なんて女子の憧れだ。友人の誘いでたまたま合コンに行ったのが運命だった。歳は25歳と亜季より3歳年下だったが、話をしてみると意外としっかりとしていて、結婚願望やマイホームのことまで計画的に考えているところに驚いた。 「亜季さんの仕事はきっとこれからの都心の再開発で需要が伸びますよ、仕事で光っている人、僕は好きだな」翔は亜季の仕事に理解してくれた。 「翔君だって、未来のこと、しっかり考えて、体を鍛えて頑張ってる。とても素敵よ」     
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