第4章 第4相談者

4/12
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
何回か会ううちに二人は急接近した。そしてお互いの夢が、2人の理想をデザインした家を建てることに決まると結婚は早かった。翔が「君についた火は消せないよ、結婚して下さい」とプロポーズした。     * 子供を産みたい、そんな翔の発言から、2人の間に溝ができた。夜の営みは、亜季にとって避けたいものになっていた。翔は翔で子作りのためにと迫ったことがあり、断られてひどく傷ついた。翔は好きなフットサルやサッカーに毎日夢中になって憂さを晴らした。亜季は仕事を家に持ち帰り遅くまでパソコンに集中した。会話はほとんどなくなってしまった。 「お互い傷つけあうことはしたくない。離れて暮らさないか?」と提案したのは翔だった。マイホーム計画は終わりを迎えた。 「そうね、お互い冷静になって、考えてみたほうがいいわね」亜季が言った。 結局、翔が家を出る形でひとり暮らしを始めた。半年後、離婚届が亜季のもとへ送られてきた。あっけない結末。30歳にしてひとり。正直、焦ったし困惑したが、修復は不可能のように見え、判を押した。     *  亜季は仕事に没頭した。あらゆるコンペに参加するものの惜敗が続いた。大阪万博関連の競争入札はことごとく大手に持って行かれた。亜季は、才能の限界を感じ始めていた。同時に会社にも居心地の悪さを感じ始めた。     
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!