第4章 第4相談者

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離婚して引っ越しをした。犬を飼い始めた。ポメラニアンのリュリュというオス犬だ。亜季がアパートに帰ってくると、しっぽを振って亜季に飛びついてくる。ある時は抱き枕に、ある時は愚痴をこぼす相手に、亜季はリュリュを溺愛した。 「ワンコだけがあたしの見方。リュリュは絶対に私を裏切らないでしゅよねー」亜季はリュリュをきつく抱き締める。キューンとリュリュが嫌がりながら返事をする。 亜季はリュリュ中心の生活を考えた。もう子供なんてあきらめた。ワンコで充分。もっと近所で、いざとなればリュリュのもとへ直ぐ向かえる仕事場を探した。 亜季は車で20分のところにある横浜の建築事務所でアルバイトを始めた。     * 毎朝6時にはリュリュがアラーム代わりに枕元に上ってくる。散歩へ行こう、という合図だ。アパートから15分の薬師公園は散歩にはうってつけの場所だ。ドッグランコースもあって大型犬がいなければリードを放してあげた。リュリュは狂ったように亜季の周りを駆け回る。 最近、公園で同じポメラニアンを見かけるようになった。なぜか相性が良かったのか2頭はすぐ仲良しになり、じゃれあっていい遊び青手になった。飼い主は亜季と同じくらいの年齢だろうか、背の高いメガネの青年だった。 「すいません、いつもウチのポン太がかみついているみたいで」青年は爽やかに語りかけてきた。 「この裏に住む斎藤です。よろしくお願いします」斎藤は軽く頭を下げた。     
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