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「かもね。女子だって仕事したいし、保育園はお金かかるし、欲しくてもできない人もいる。ほしい時に大変な思いするのは結局女子だし」亜季は言った。
「価値観が同じ人と、一緒にいれば僕はそれで充分、満足だな」斎藤こそが今で言う草食系男子かと亜季は思った。
「でもね、好きな人といつもそばにいたいと思うのはあたしだけかな?」亜季は意を決して同棲をにおわせた。
「そりゃあ理想だよ、亜季ちゃんとリュリュ・ポン太、みんなで住めたら最高だよ」
斎藤は嬉しそうに運転席の亜季の背中に手をまわした。
*
それからは休日のたび二人で不動産に出かけ、ペットが可能なマンションを探してもらった。なるべく散歩にいい多摩川沿いのマンションに絞った。意外にも物件は多かった。問題は賃貸か持ち家にするか、という選択だった。
或る日の休日、二人は物件探しで多摩川沿いを歩いていた。
「隆、これは大切な話。聞いて。賃貸か持ち家にするか決めないと話は進まないわ。二人の将来を考えてほしいの、言いたいことわかる?」
「そりゃあ持ち家だよ。賃貸で掛け捨てにするのは馬鹿馬鹿しいと思うんだ。結婚を考えてほしい。でもプロポーズは改めてさせてほしい。今突然じゃあまりにロマンがないだろ?」
斎藤は覚悟を決めたように、ゆっくりとした口調で言葉を紡いだ。
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