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第5章 第5相談者
まだ5月も下旬というのに、都心は連日夏日が続き、ジトっとした空気が梅雨の到来を予感させた。ここ新宿百人町の雑居ビルにある『発散堂』の店主、御手洗(みたらい)幸一(こういち)はウクレレを片手に、競馬新聞の出走馬に赤ペンでチェックを入れていた。赤いアロハはボタンが半分はだけ、八分丈の麻のパンツは裾がさらにまくられている。雪駄の足を机の上に投げ出して、御手洗はおもむろに叫んだ。
「菜月チャ―ン」
「はーい」今日は、ピンクのナース服。ひざ上20センチのミニスカートからのぞく
白いストッキングがすらりとした太ももを強調させていた。
「明日の東京7レースから10レースまでのマークシート書いておいたから、馬券売り場までちょっくら買い物お願いね。全部3連複。10万円分と今日のセクシーな衣装におひねりね」御手洗は、馬券購入券と11万を早業で、さつきの胸の谷間に捻りこんだ。
「もー困ったおじさんね、毎度あり!」菜月は嬉しそうに胸元を手で押さえた。
ふいに銭形平次の着メロが鳴りだす。
「はい、皆様のイライラ解決!発散堂でございます! ハッサン24、24時間受付中です!」御手洗の声はルパン三世のように軽妙で、小気味いい。
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