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第3章 第3相談者
新宿百人町の雑居ビルにある『発散堂』店主、御手洗(みたらい)幸一(こういち)は今日も無意識にウクレレをポロンとかきならしながらCS番組の競馬中継に夢中だ。3連複なのでもうひと月も当たり馬券は出てないが、当たった時には普通のサラリーマンの月収ほどになるのだ。アロハシャツに麻の八分丈のパンツ、そして雪駄。どうみても平成の世には見られないチンピラスタイルだ。
「菜月ちゃーん」小高い声で御手洗が言った。
「はーい」
「アイスコーヒーをたのむよ」
「了解でーす、ご主人様」
メイド服で菜月がアイスコーヒーを持ってくる。店主の好みもあるが菜月自身がコスプレ好きで、忍者、看護士、女子高生、なんでも揃って持っていた。今日は短いスカートに白いニーハイのソックス。御手洗の視線が太ももに集中する。
「ありがとさん、これ、今日のコスプレ代」御手洗は千円を2枚、太もものソックスに入れ込んだ。
「やだあ、Hな御手洗さん、毎度ありー」菜月は嬉しそうにチップを受け取った。
ふいに銭形平次の着メロが鳴りだす。
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