春の光

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 露天風呂を出てから、更衣室の外で待ち合わせをした。部屋に戻る前に旅館の周囲の庭を散歩することにしたのだ。  仁はわたしの浴衣姿を見ると、嬉しそうに笑った。もちろん仁も浴衣だ。 「やっぱり温泉にはこれが合うな。お揃いだし、いい感じ」  仁が浴衣の上に着てる男性用の羽織は紺、私が着ている女性用はえんじだ。当然、この宿の客みんなとお揃いなわけだけど、二人だけで並んで歩くと、それが色違いのペアルックぽくて少しだけ照れ臭い。変な感じ。 「今日はよく歩いてる気がするなぁ」 「日頃の運動不足が堪えて、筋肉痛になるんじゃないの、カズは」 「そこまでではないですー」  運動不足は否定できませんけども。 「そういや俺も、最近運動らしい運動してないな。体育の授業やら何やらで動いちゃいるけどさ。あー、バスケやりてー!」  仁が大きく伸びをしながら体をひねる。 「今度川崎でも誘ってサークルにでも顔出してみっかな。――そうだ。あいつ、いるかな」 「あいつって?」 「……木村。木村琢磨」
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