40人が本棚に入れています
本棚に追加
露天風呂を出てから、更衣室の外で待ち合わせをした。部屋に戻る前に旅館の周囲の庭を散歩することにしたのだ。
仁はわたしの浴衣姿を見ると、嬉しそうに笑った。もちろん仁も浴衣だ。
「やっぱり温泉にはこれが合うな。お揃いだし、いい感じ」
仁が浴衣の上に着てる男性用の羽織は紺、私が着ている女性用はえんじだ。当然、この宿の客みんなとお揃いなわけだけど、二人だけで並んで歩くと、それが色違いのペアルックぽくて少しだけ照れ臭い。変な感じ。
「今日はよく歩いてる気がするなぁ」
「日頃の運動不足が堪えて、筋肉痛になるんじゃないの、カズは」
「そこまでではないですー」
運動不足は否定できませんけども。
「そういや俺も、最近運動らしい運動してないな。体育の授業やら何やらで動いちゃいるけどさ。あー、バスケやりてー!」
仁が大きく伸びをしながら体をひねる。
「今度川崎でも誘ってサークルにでも顔出してみっかな。――そうだ。あいつ、いるかな」
「あいつって?」
「……木村。木村琢磨」
最初のコメントを投稿しよう!