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仁が大学を卒業して先生になってからは、家族揃って夕食をとることが、本当に難しくなった。
――わかっている。
いつまでも同じ形ではいられない。月日が経つごとに家族の在り方も変わってくる。学生だった仁は社会人となり、小さいとばかり思っていた希望も、もう小学生になった。わたしだって、来年の今頃は社会人になっている――予定だ。
変わらないではいられない。それが当たり前……なんだ。
「今度の週末、お祝いしよう」
突然の申し出に落としかけた視線を上げると、箸を休めた仁がわたしと目を合わせてニコリと微笑んだ。
「希望の入学お祝い。みんなでどこか遊びに行って、食事でもして。父さんにもそう言っておいて。できたら土曜日がいいよな。日曜日はゆっくり休ませないと、のんが疲れるだろうし。まだ学校にも慣れてないだろうから」
「う、うん?」
「で、ゴールデンウィークは旅行に行こう。今年は少し遠くまで足伸ばしてみるのもいいかもな。希望ももう小学生だし」
「……仁?」
随分唐突な?
どうして今突然そういう話をするのだろう? 首を傾げると、仁は箸を置いて改めてわたしの目を覗きこんだ。
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