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パシャパシャと水音が聞こえる。何をやっているのかわからないぶんだけ、向こうの気配には敏感になってしまう。それがおかしかった。
「はぁ。気持ちいいなぁ」
「うん、最高だね」
お湯は熱くもなく温くもない。外気も暑くもなく寒くもない。本当に何もかもが快適だ。
「……カズはさ、温泉に来ると、まず何思い出す?」
唐突とも思える質問だったけれど、すぐにその答えは浮かんだ。
「一番初めに行った『家族旅行』かな。仁と初めて会った時の……」
もっとも、まだ正式な家族ではなかったけれど。わたしはあれは一番最初の家族旅行だったと思ってる。
思い出していたのは、お父さんとお母さんが再婚する前に、みんなで行った旅行だ。わたしたちが家族となった、始まりの日。
クスッと仁が笑った気配がした。
「そうだな。俺も同じだ」
なんとなくしんみりとした気分になって、わたしはじっと湯面を見つめた。
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