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「おせーよ」
「ごめんごめん」
結局1時間くらい遅れて個室の戸を引いたあたしを、祥太郎がなじるように出迎える。
「久しぶり~」
そんな祥太郎を遮るようにして、五年ぶりのなっちが手を振ってくれた。
なっちは『丸顔を隠すため』と伸ばしていた髪がより一層輪郭をぼやかす髪型になっていたことと、当時は自分をより幼く見せるため(と本人も言っていた)計算ずくのヒラヒラした服が社会人らしいスーツに変わったこと以外、何も変わらない容貌をあたしに向ける。
「なっち~、久しぶり~」
お互いに「変わらないね」なんて言いながら、あたしは上着を畳みつつ、当たり前のように空けられていた祥太郎の隣に座る。
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