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「改めて乾杯しようぜ。咲奈ちゃんビールでいいんだろ?」
「あ。ありがとー」
波多野が席の端からカラオケ店に付いているような内線電話を引っ張って、あたしに尋ねた。
挨拶もそこそこに、“まずは飲み物”“まずは食べ物”の波多野は、高校時代、青春を部活動に捧げ、その鍛え上げられた肉体を持って全国大会に出場したことを常々自慢していて、酔うとすぐに上半身裸になっては筋肉を触らせてくる体育会系肌だったが、今ではその自慢の肉体も些か柔らかな丸みを帯びているようだ。
あまり興味なさそうにこちらを見ながら、小皿の豆を一粒ずつ摘まんでは口に運ぶ丸川は、よく見ると空いた右手で小さく手を振ってくれている。
無駄なことは言わず、無駄なことはせず。
多くを語らない故に分からないことが多いが、いつの間にかそばにいて、いつもそこにいる、丸川はそんな奴だ。
あたしにもなっちにもそんなに興味を示さず、どうやら女の子というものにそもそもの興味がなさそうで、もしかしたらゲイなんじゃなかろうか、と疑っていたのだが、その答えは今も分からないままだ。
座る場所も役割も、あの頃と同じ。
お互いに気楽だった大学の頃より、苦労が顔に刻まれているけれど、間接照明がそれを和らげてくれていて、空気までがあの頃のようだ。
あたしのビールが届いて、各々が盃を掲げて、合わせる。
ずいぶんと気取った、土を焼いた盃の衝突音が鈍く響いて、苦み走った泡の喉越しがあたしをより昂ぶらせる。
気心を知った仲間内での会合なんて久しぶりだな、なんて気持ちがアルコールと共にあたしに染みていった。
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