55人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
祥太郎と恋人の真似事をしたことがないわけではなかった。
恋に恋するような中高生の時分のことだ。
ところが十六歳の、とある日。
子供の二人が背伸びをして、祥太郎の部屋で初めてお酒を飲んで。
初めての夢見心地の中、祥太郎は長いキスをしてきた。
私はそれを目を閉じて、甘んじて受け入れた。
するとエスカレートした祥太郎は、第2ボタンまで開けていたブラウスの胸元へと手を滑り込ませてきた。
まぁそういうことになるよな、なんてどこか冷静に思っていたはずのあたしは──。
その瞬間に、大笑いしてしまった。
なんだか非常に滑稽に思えた。
祥太郎は、そんなあたしに一瞬ビックリして、胸元から素早くその手を抜いた。
そんな様子に、ますます笑いが止まらない。
「そうだよなー」
なんて笑って誤魔化した祥太郎の股間は、制服のズボンの上からでもハッキリとわかるくらい屹立していた。
──そして誤魔化しようがない程、動揺していた。
それからは体を触られるどころか、冗談交じりのキスすらなくなって、あたし達は本当の意味での友達となった。
思えばあの時、祥太郎は傷ついたのかも知れないとしばらくして気付いたのだが、結果これでよかったのだと思っている。
最初のコメントを投稿しよう!