4.大学時代の友達

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 店を出ると、言い訳のしようも無いくらいに朝だった。  悪いことなど何もしていないが、なんとなくしてはいけないことをしてしまったような鈍い申し訳なさが込み上げてきて、それは酔った頬をさらす風と共に快感となって、あたしを刺す。  尚も目を爛々とさせる波多野、目が開いているのか閉じているのかわからないくらい細める丸川、何故か潤んだ目を祥太郎に向けるなっちらと駅で別れ、あたし達は始発から何本目かの、まだ目覚めていない閑散とした電車に乗り込んだ。 「あいつら変わらねぇな」 「今頃向こうも同じこと言ってるよ」 「間違いない」  くっくっく、と祥太郎独特の、ちょっと咀嚼するような笑い方が小気味良く電車の揺れと一緒にリズムを作る。 「でも楽しかったな」 「ホント。またみんなで遊びたいな。夏とかさ、海行きたい」  車窓の外の雲はガラス越しのせいか夏のそれのような色形で、あたしの心を季節の向こうへと運ぶ。 「んー……。夏かぁ……」  あたしと同じように窓の外を眺める祥太郎だったが、その視線はあたしとはまるで違うところを見ているようで、その言葉には煮え切らない何かが多分に含まれていた。
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