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突然過ぎて、祥太郎の言葉が大脳皮質を通り過ぎていく。
祥太郎はそんなあたしを素通りするみたいに、話し続ける。
「子供ができた。……って言っても、もう6カ月だけど」
「結構経つじゃん。なんで教えてくれなかったの?」
「安定するまではって思ってたら言いそびれた」
腕組みをし、頬杖をつきながらその人差し指で頬を掻く、祥太郎の本当に照れているときの癖。
あたしはしばらく呆然と、二の句を継げなかった。
何が驚いたかって、祥太郎は常々嫁とはそういうコトが無いと文句を言っていたのに、今更照れながら子供が出来たとか言い出したことだ。
配偶者とのセックスを公言するような人はなかなか居ないのはもちろんわかっている。
それは祥太郎も例外ではなかったのだろう。
しかし、祥太郎があたしにそんなつまらない嘘で隠し事をしていたことに驚いた。
祥太郎がそうした理由、真意が掴めずに、ただあたしは流れていくビル群を眺めた。
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