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三十分が十二話で六時間。
最終回のエンドロールを涙で見送って、隣で舟を漕ぐ悠資を揺する。
「終わったよ」
「あ、うん……面白かったね」
余韻も何もない薄い表情を湛える悠資の細い目は、早朝の川面のように美しく、あたしを呆れさせる。
「少し寝ようか?」
「うん」
脱力してあたしの肩に頭を預ける悠資は、油断すれば今にも寝てしまいそうだ。
「ここじゃなくて。ベッド行くよ」
操り人形のようにぐってりとした悠資の手を引いて立たせ、あたしはブルーレイデッキの電源を落とした。
ところが。
天の邪鬼なのかなんなのか、ベッドに横たわった途端、悠資は目をぱっちりと開いて、無駄にごろごろっと転がっている。
「もう。なんなのよ」
笑いながら窘めるあたしは、まるでこの人のお母さんだ。
ため息にも、それにそぐわない感情が混ざる。
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