56人が本棚に入れています
本棚に追加
「絶対不倫だと思ってたよねー」
「思わせるように仕向けてたんだろ」
くっくっく、と祥太郎はリズムよく笑う。
「咲奈わざと俺の手取って開かせたじゃん」
「あのサラリーマンめっちゃ指輪みてたよ」
「悪い女」
「何を今更」
ガラガラの車両に、二人の笑い声が響く。
端の席に座っていた酔っ払いが『何事だ?』と目を覚まして、キョロキョロしている。
あたしと祥太郎は顔を伏せて、声を噛み殺した。
「楽しくなってきちゃった」
「俺も」
声をひそめて囁き合っていると、まるで本当に秘め事のようで、気分は偽りの混じった高揚をみせる。
最初のコメントを投稿しよう!