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誰かに抱かれたかった、というのは本心からのものだったが、誰でもいいというわけではなかった。
当てが外れて、あたしはスマートフォンを乱雑に置いて、大の字になる。
ため息が零れていく。
そうしていてもしょうがないとしばらくして気付いたあたしは、仕方なく立ち上がって、外に出ている植物たちに餌を与えることにした。
溜息で構築された灰色のビル群の上の灰色の雲を散らしたくて、あたしは空に向けてホースの水を放つ。
汚れた水でも虹って架かるのかな──。
そんなことを考えている自分が何だか滑稽に思えて、笑いが込み上げてきた。
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