1.融けるように

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「まだ時間平気?」  尋ねると、祥太郎がスッと伸ばした腕からオメガの時計がひょっこり顔を出す。  祥太郎の手首はバスケットボールで鍛えられた名残があって、セクシーだ。 「なんとかなる、かな」  わざとらしく渋い顔を作って祥太郎は呟くが、本当はそんなに難しい話じゃないことは、もちろんわかっている。 「家、来る?」 「行く」  ほら、即答だ。  とはいえ、あたしだって『時間平気?』なんて白々しいと、自分でも思う。  二人して明日は休みで、尚且つこう一度盛り上がってしまえば、どうせ明け方までぐだぐだするのは慣例で目に見えているのに。  普段は毛嫌いする予定調和なやりとりすら、今はむしろ小気味良い。  やはりお酒の力って偉大だ。  真っ黒な車窓が映すあたしが、なんだかとても楽しそうに笑っているように見えた。
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