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「とりあえず、乾杯」
あたしは500ml缶のビールのタブを上げて、祥太郎のそれと重ねる。
それから、鈍く無機質な音を立てた缶を一口飲んで、キッチンの端に置いた。
祥太郎は勝手にテレビを付けて観ている。
あたしがタコを刻む音に、アイドルの嬌声が混じった。
「つまんでて」
タコとワカメを酢で和えたものをテーブルに置く。
祥太郎は胸元があいた衣装のアイドルが卓球対決しているよくわからない番組に夢中になりつつ、「いただきます」と呟いた。
祥太郎の口の中で報われないタコがコリコリと悲鳴を上げているのを横目に、温めておいたフライパンに胡麻油を引いて、豚の細切れとモヤシを炒める。味付けはこの前旅行先で買ったご当地味噌だ。
これはアイドルの胸の谷間の肴には勿体ないので、皿に移すなり自分で一口食べた。
うん。美味しい。
近所の(と言っても徒歩10分の距離だが)鉄板焼き屋さんに分けてもらったキムチを皿に空け、あたしも座る。
すると祥太郎は夢中になってた割にあっさりとテレビを切った。
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