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「足りなかったら棚に乾き物もあるから」
「充分だよ」
さっきまでタコをもごもごしていたくせに今さら取り繕うように手を合わせて「いただきます」と言う祥太郎に倣って、あたしも手を合わせる。
目新しい話題なんていつも無い。
今日だって、高校の時に一緒にしていた喫茶店のバイトの、当時居たイヤな先輩の噂話で盛り上がった。
それでもいつも刺激があって、それが落ち着くと訪れる緩やかな眠気に抗うことも無く、身を委ねる。
本能のままに生きている実感。
あたしは済んだ皿をサッと流し、水につけておくだけにして、ソファの下に転がっている祥太郎に布団を掛けて、自分はソファで横になって毛布を被った。
祥太郎がかく酒気を孕んだいびきが、深い夜に融けていった。
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