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「……お前の目覚まし時計の方がうるさかった」
どうやら習慣でスイッチを入れてしまった目覚まし時計は正常に動いていて、まだ眠りから覚めなかったあたしの代わりにどうやら祥太郎がそれを止めたみたいだ。
その一方で、あたしが祥太郎のアラームのバイブレーションで目が覚めたことに気付いていたのだろう、祥太郎は毛布を頭まで被ってごもごも文句を言う。
あたしは、時計が好きだ。
高級品でも安物でも、デザインに優れていても機能性に優れていても、皆一様に同じ時を刻む。
まるで人間みたいじゃないか。
友達はみんなスマートフォンで時刻を確認したり、アラーム機能を目覚まし代わりに使ったりするが、あたしはそれを好まなかった。
あたしの拘りだ。
とはいえ、どうやらあたしの目覚ましで祥太郎は起きてしまったようなので、心にもなかったが、ひとこと謝っておく。
「ごめん。──コーヒー、飲む?」
ついでに訊くと言うよりかは、コーヒーを注ぐついでに謝ったのだが、どちらにせよそんなことは関係なさそうに、祥太郎は毛布から手だけ出して“飲む”という意思を表示した。
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