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4.大学時代の友達
三寒四温。
気候がコロコロ表情を変える季節になって、あたしは朝、着ていく服に悩む喜びを得ていた。
しかし、この日は仕事がまさかのトラブルで押し、せっかく選んだ春色のヒールもまどろっこしく、あたしは駅に向かって走っている。
今日は、祥太郎の大学時代の同級生が久々に上京してくるということで、せっかく気合いを入れてきたのに。
祥太郎とは大学は違ったが、より良い就職先を血眼になって探していたあたしの同輩より、祥太郎の学友の方が、酒の味を覚えたてのあたしには馬が合った。
自分の大学にいるより祥太郎の大学に入り浸る時間の方が長かったんじゃないかと、記憶の糸がイヤホンのコードのようにこんがらがる。
そんな中にあって、年中飲み歩いていたメンバーがいたのだが、卒業、就職と共に散り散りになり、一堂に会せる機会は減ってしまっていた。
その面子で「久々に飲み会があるんだけど、お前も来るだろ」とのほぼ断定的な祥太郎の問いに、「もちろん」と二つ返事で答えたのが先月のこと。
三月に入ってからも指折り数えて楽しみにしていたのに、主任のせいで──。
怒りが込み上げてくる度にぐらつく足首が、あたしを本当にやきもきさせる。
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