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5.終わらせる言葉
季節は春を飛び越え、空はいつもいつも不機嫌そうにしている。
あたしはといえば、案の定祥太郎とは遊びに行けなくなった日々をそれはそれは退屈に過ごしている──
なんていうことは無く、自分でも拍子抜けするくらいに以前と変わらない毎日だった。
たまにふと、日々大きくなっていく奥さんのお腹を見るというのはどんな気持ちのするものかと、好奇心で連絡を入れることはあったが、それ以外はあたしと祥太郎、接点のない毎日を過ごしていた。
梅雨の晴れ間にふと気付くと、だいぶ日は長くなっていて、仕事から帰ってもまだ夜と言うには早い空、という喜びをあたしは窓辺から堪能していた。
分厚い黒い雲の隙間から射してくる真っ赤な夕焼け。
今にも雨の降り出しそうな。
そして今にも世界が終わってしまいそうな空に、あたしは子供みたいにわくわくする。
きちんと早く来ればこの空を見れるのに、と相変わらず約束通りにはやって来ない悠資を慮った。
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