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DELETE.
もう、いいんだ。
手に入れたのは、勇気や希望、友情や愛情なんかじゃなかった。
Delete.
失ったものは沢山ある。
時間、金、そして、心。
その分手に入れたものはなんだったのだろうか。
「画面の向こうには、あなたと同じ生身の人間がいます。それを忘れずに」
よく耳にするうたい文句。
その“生身の人間”たちにどれだけ傷つけられたのだろう。
そのことを理解している者はどれだけいるのだろう。
画面上にはキャラクターと、そのキャラクターに敵対する強大なモンスター。
その中で、チャット欄に飛び交うのは罵詈雑言の数々。
擦り切れていく心。
自分に対してではなくとも、疲弊してくる。
自分さえも「またあいつが足引張ってんのかよ」と舌打ちを始める。
そんな時間が二時間ほど続き、夜も更けて、その日は解散、それぞれ別のことをしたり、ログアウトしたりする。
そんな日々が何日も続く。
何日も続いて、やっと敵を倒したかと思えば、アップデートがかかって次の敵が現れるのだ。
その日々とサヨナラした今、何が楽しかったのかと漠然とした疑問にかられる。
何が楽しかったのだろうか。
仲間たちと時間をかけて強敵を倒したこと?
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