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その物差しが自分のものだと気付いたのは、22.4cmの目盛りが綺麗に抉り取られていたからだった。
泥まみれで、焦げたような色に変色しながらも、傷はしっかりとそこに刻まれていた。
「何それ?物差し?」
大きくなったお腹をさすりながら、佳那が後ろから覗き込んでくる。
「これさ、昔僕が使ってたやつだと思う」
「え、なんで分かるの?」
佳那の目が丸くなる。
初夏の田園を撫でる風が、背の低い稲を揺らした。
これを捨てたのは、丁度この時期だっただろうか。
物差しの傷跡を指で感じながら、僕は少しだけ笑った。
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