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藤枝(ふじえだ)が僕の隣の席になったのは、小学3年生の3学期のことだった。 僕のクラスでは、定期的にくじ引きで席替えが行われていた。 くじを引く前、仲の良い友達と「隣の席になれたら最高だな!」と騒いでいたが、藤枝が隣の席だと分かった途端にその友達のことは頭から離れていってしまった。 「七峰(ななみね)くん。3学期の間よろしくね」 藤枝はきゅっと口角を上げて僕に笑いかけた。元々茶色がかっている髪が、窓からの日に照らされていつもよりもずっと明るく見えた。 僕が答えるよりも先に藤枝が続ける。 「友達と隣の席になれなくて、残念だったね」 藤枝は少しも残念ではなさそうに笑って言った。 僕は、本当は舞い上がりそうな気持ちを必死で抑えながら、ぶっきらぼうに答えた。 「別に」 藤枝はもう一度微笑んでから、黒板に目を向けた。
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