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22.4cmの謎を聞くことが出来たのは、藤枝の転校が決まった3学期の終わりのことだった。
ある日、いつものように帰りの会が始まったかと思うと、突然担任の教諭が藤枝を黒板の前に呼んで立たせた。
「藤枝さんは4年生から別の小学校へ転校することになりました」という担任の声を聞いた瞬間、ランドセルに筆箱を詰めていた僕の手がぴたりと止まった。
担任の言葉を頭の中で反芻しながらゆっくりと黒板に顔を上げると、茶色い髪で目を隠すように俯く藤枝が唇をきゅっと結んでいた。
来週の道徳の時間が藤枝の送別会に充てられること、皆で色紙を書いて藤枝に送ることが告げられてから藤枝は席に戻された。
僕は隣に帰ってきた藤枝の方を見ることができなかった。
帰りの会が終わるとクラス中の女子が藤枝の席に集まってきた。僕はそれを掻き分けるようにして足早に教室を出た。
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