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田んぼの畦道で木の枝を拾い、久しぶりに雑草ゲームを始めたが、いつのまにか自分のスコアを数えるのを忘れていた。 気付くと、畦道を逸れてあの日藤枝がしゃがんでいた場所で同じように田んぼを覗き込んでいた。 葉も水もなく、ただ土だけが敷き詰められていた。 あの日ここで出会ってから、僕は毎日のようにこの道を通って帰っていた。 藤枝に会うことを期待していた。 下を向いて雑草ゲームを始めるより先に、道の先に茶色い髪の女の子が歩いていないかを確かめた。 本当に藤枝に会うことは何度もあった。 後ろから藤枝の茶色い髪を眺めていることもあれば、声をかけられて一緒に帰ることもあった。 藤枝に声をかけられても僕はちゃんと話すことが出来ず、それでも藤枝は楽しそうに笑いながら隣を歩いた。 4年生になったらその全部がなくなるのだと考えた時、急に鼻の奥がつんとした。 僕は一生懸命に鼻をすすり、こみ上げて来る涙を抑えた。 「七峰くん?」 いつもそう言って後ろから声をかけてくれた。 「七峰くん?」 その声を聞くたびに僕の心は跳ねるように踊り出した。それと同時に、その喜びを隠すことに必死になった。 「ねぇ、七峰くん!七峰くんってば!」 ・・・? いや、そんな風に声をかけられた事はない。 僕はいつも、すぐに藤枝の声に反応していたから。 ふと横を見ると、僕の隣で本物の藤枝が小さく笑っていた。
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