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「じゃあいいじゃん。お前も俺以外の奴に抱かれてみればもう少しセックスも上手くなるんじゃね?」
若干、棘のある言い方をされて思わず愛斗はぎくりとした。
五十嵐は気づいているのだろうか。
愛斗がセックスに感じていない事に。
身体を強張らせていると五十嵐が溜め息をつきながら愛斗の肩を抱き寄せてきた。
「お前のために言ってるんだぜ?」
声色は優しいものの、その雰囲気にはピリピリとしたものを感じる。
「………わかった、行く…よ」
愛斗が返事をすると、五十嵐の機嫌は一気に明るくなった。
「っしゃ。じゃあ返事送ろ」
語尾に音符マークでもついてそうな感じで、五十嵐は再びスマホをいじりだした。
暗い気持ちの愛斗とは反対に上機嫌で返事を返す五十嵐を見つめる。
乱交パーティーなんて本当は行きたくない。
見ず知らずの初対面の人とコミュニケーションをとる事さえ難しい愛斗が、セックスなんてできるわけがない。
しかし、ここで愛斗が反抗でもして別れを切り出されたらおしまいだ。
昔より理解はされてるとはいえ、やはり世間体では敬遠されがちな性癖の自分がこうして恋人とよべる相手を見つけてましてや同棲できるなんて夢のような話だった。
ゲイである以上、自分は一生恋愛には苦労するだろうし恋人と同棲なんてできるはずないと思っていたからだ。
しかし、成行きのまま恋人同士にはなったけれど五十嵐は愛斗にとって大事な人間だ。
彼を失いたくない。
人肌を失いたくない。
やっぱり、ゲイである自分はこんな恋愛しかできないのだろうか。
普通の恋人として五十嵐と付き合っていくことは無理なんだろうか。
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