男の話

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男の話

あぁ、天気が良いな 外で ひらひら桜が舞って ぶんぶん ぶんぶん ハチが飛んで ぶんぶん ぶんぶん 頭に入って ぞわぞわ ぞわぞわ 毛虫が這う 這う 這う 肌を ぞわぞわ ぞわぞわ 短い毛足で ちくちく ちくちく 皮膚に刺さる 人の目が怖くなる 頭が可笑しいって 皆、知ってる それは秘密で 内緒の話 あぁ あぁ 頭が 頭が ふわふわ ふわふわ 歪んだ視界で 人の頭が膨れてくように ちょっとずつ可笑しくなって 春陽射し込む 狭い部屋の中で1人 「お薬の時間です」 テーブルの上 散らばる錠剤を眺めて ぽつりと呟く ミルク ミルク ミルクが欲しいな 苦い薬を飲むなら 甘いが欲しいな 透明なグラスコップに 白く仄かに甘いミルクを注ぐ 心療内科から処方された 大量の錠剤を 慣れた仕草で飲み込んで 殆ど家具の無い リビングの床に座り込み 空を見詰めて放心する なんぷん 何分経った? ぐるぐる ぐるぐる 薬が効き始め 少し冷静になりだした頭で 時計を見る 「さ...さん...さんじゅっぷん」 渇き出した喉が張り付いて 上手く声が出せない いつから 何時から 可笑しくなったんだっけ 最初は些細な事で ちょっとだけ人より臆病で ちょっとだけ視線が怖くて 少し、しんどいなって日々が続いて そうだ 酔っ払いに絡まれたんだ     
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