21 映るんです

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「仕事の方は?最近帰りが遅いようだけど」 「決算月だったし、消費税の変更でシステム関係でちょっと」 「そうか」 帰りが遅いのを知っていた迅に、優香もドキとしたが、これは迅の社交辞令だと言い聞かせて、麦茶をえいと煽った。 「うわ?こぼした!」 「あ。ばか?」 「……タオルで拭くから……良いです」 「どれ。貸せ。あーあ、髪も濡れて……」 そういって迅は優香の首や肩をタオルでトントンと拭いて行った。 「ってゆうか。お前、汗で濡れてるし」 すると急に彼女の顔が真っ赤になった。 「もう。いいです。返して」 「どうした?」 「いいから、返して」 「なんだよ。いきなり?」 タオルを引く彼女の様子に、迅は驚いたが、なんかどうしても理由が知りたくなった。 そんな椅子に座っていた彼女を迅は背後からからぐっと抱きしめた。 「う!離せ!」 「……言え。全て話せ」 「やです!く!」 「こちょこちょするぞ!森田」 「ううう」 やがて彼女の力が抜けた。 「そのですね……名前を呼ばれたかと、思っただけです」 「名前?俺、いつ言った?」 「『ってゆうか』って」 「……」 これを聞いた迅はツバをごくと飲んで、彼女を離した。 「そうか」 「すいません。つまんないことで」 ちょっと間があったが、迅は話し出した。 「まあいい。それよりもだな。最近、怪しい男がいないか」 「怪しい男……」 「挙動不審な男だ」 優香には目の前の男の様子が挙動不審であったが、どういう意味なのか訊ねた。 「いや。お前は毎日走っているだろう?だから不審な男がいたら、気を付けて欲しいんだ」 「わかりました。ご用はそれだけですね」 「あ、ああ」 本当は一緒に銭湯に誘いたかったが、迅はぐっとその想いに背を向けた。 「そう言うことだ。気を付けて……帰れよ」 「はい。では。御馳走様でした」 そういって彼女は迅の前から去ってしまった。 彼女の使ったグラスを彼は黙って片付け、仕事に戻った。 自分の言葉で赤面していた彼女の顔を思い出さないように、必死に仕事に向かったのだった。 そして数日後。 事件が起きた。 「やられた!優香ちゃんよ」 「どうしたんですか?」 「ゴミよ!不法投棄されたのよ」 早朝、ゴミ捨て場を通った優香は、アキラとロッキーママに呼び止められた。 「これは……家財道具ですね」 「引っ越しゴミだろうな」 「業者が処理費用をもらって、ゴミだけここに捨てたのね」 アキラとロッキーママは憎々しげにゴミの山を見ていた。 「ここは車が停めやすいから、ドライブスルーになっていますよ」 「くそ……いつやられたのかな」 「ねえ!監視カメラは?」 「そうだ!カメラだ」 「カメラ?」 二人の会話で優香はここに監視カメラが有ることを始めて知ったが、それを見れば解決すると思ったので、ここを後にし、会社へ向かった。
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