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「○番線に、電車が参ります」
「白線の内側まで下がってお待ち下さい」
実里ちゃん。
ごめんね。
両の手で体を抱き締める。
あの男の臭いが染み付いた体。
もうきっと、あなたの元に帰ることは許されない、私の体。
ここに来るまでに決めていたの。
最後に口にするのはあなたの名前がいい。
「さよなら」
「みさとちゃん」
私の憎しみや怒りや痛みは、全てあの男に。
私の喜びや愛しさや笑顔は、全て織部実里に。
「大好きだよ」
届いて欲しい。
ゆっくりと瞳を閉じる。
実里ちゃんが私の名前を呼んでいる。
良い夢が、見られそうだ。
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